夫の死をきっかけに婚家を追われたますは、子どもたちと無心に手毬を突いて遊ぶ良寛を見かけ、その温かい微笑みに目を奪われた。その後、ますは良寛の歌に感銘を受け、自分自身の生き方を見つめ直すために出家を決意する。当時、良寛は国上山にある国上寺のこじんまりした五合庵を定住の地としながら、立派な寺の住職になることを薦められても、「余分なものは何一ついらない」と全国を托鉢して歩いていた。行脚の途中、彼は自分の実家の没落ぶりを目の当たりにする。彼の家は越後の国出雲崎で代々名主をつとめ、幕府御用達金を扱う両替商の大店を営んでいた。嫡男であった良寛は、名主代理として罪人の処刑に立ち会ったり、理不尽なことを強いられる辛さに耐え兼ね、18歳で出家したのである。立ち去ろうとした良寛が泥棒と間違えられて村人に殴られているところへ、弟嫁のやすが通りかかった。久しぶりに対面した弟...
両親を失い、世間から隔絶された教護院で育った前田和夫は修道士ガダローラによって洗礼を受けた。洗礼名はイグナシオ。自分の居場所を見いだせない息苦しさに耐えかねたイグナシオは、ある日突然、親友をバットで殴り殺す。シスター・カタリナは一部始終を目撃していたが、彼を愛するがゆえに嘘の証言をし、それは事故ということで片付けられた。イグナシオは教護院を飛び出し、歌舞伎町の小さなクラブで新たな生活を始めるが、彼を拾ってくれたホモセクシュアルの店長の度重なる誘いに嫌悪感を覚え、ついには半殺しの目にあわせてしまう。偶然その場に居合わせた暴力団組長の大谷は、衝動的な凶暴性のなかに淋しさを秘めたイグナシオに興味を抱き、自分の妹・茜に面倒を見させることにした。茜は過去に受けたレイプにより心に深く傷を負い、今はコールガールに身をやつしている。イグナシオの純粋さに魅かれ、茜は次...
ミッドナイトDJ 石黒賢 菅野美穂
年功不序列 金田明夫 七瀬理香
怪我 鷲尾いさ子 大杉 漣
フリーカメラマンの上條修平は、ある夜、バーで居合わせた青年実業家・香坂正樹ともみ合いになり死亡させてしまう。バーテンの矢沢らの証言により、警察は上條の正当防衛を認め釈放する。香坂の婚約者で海運会社の社長令嬢・兵藤葵は香坂の死の真相を知るべく、上條に接近。しかし香坂の裏の顔や、上條の本心などを知る内に惹かれ合う様になる。
『Find‐er』カメラマンのミズキ(菅野美寿紀)は戸惑っていた。それは、取材に訪れた画廊のオーナー(夏八木勲)に、今、自分が抱えている“思い”を言い当てられてしまったからかもしれない。オーナーは、次の取材までにシャッターを切るのにふさわしい瞬間を撮ってこれたら、この画廊に展示しようと言う。しかし、ミズキは何にカメラを向けてもシャッターを押せない……。『錆びた指紋』キヨリ(宮前希依)は、不動産会社に勤めている。三ヶ月空家になったままのマンションの部屋にお客を案内したのだが、また契約が取れなかった。その部屋のベランダには、干涸びた金魚の死体があった。キヨリの手には無数の自傷の傷跡がある。いつしか、空家のままになったマンションの部屋は、彼女の隠れ家になっていた。だから、入居を申し込む人には、「今別の手付けが入った」と断ってきたし、干涸びた金魚もそのままに...