劇作家杉守修三は、結婚して十余年間苦節を共にして来た妻里枝を失った。彼の所属する芸文座の人々によって通夜の行われた夜、彼は同座の研究生夏川文子の存在を知った。文子は東北蔵王山の麓の町の酒造家の娘であったが、山手学園に通学しているといって、ひそかに芸文座の研究生になっていた。演出助手の荘司は文子に好意以上のものを寄せていたが、彼女の目あては杉守であった。酒ずきの杉守のために家から取寄せた酒を贈ったりして積極的に彼に近づいて行った。芸文座のスタア神近須英子は、かつて里枝と杉守を争って破れた苦い経験があったが、今も彼に対する友情は変らず、妻を失った杉守をなぐさめ、何くれとその身辺の世話をしようとするが、そこへ若く、積極的な文子が割込んで来て彼女をおどろかせた。そして、秋の芸術祭参加作品の脚本を書くことになった杉守を文子はさらうようにして自分の郷里の温泉へつ...
昭和二十一年の夏、楢崎、大平、木原、東郷の四人が彼等の戦友で、比島で死んだ田口の未亡人勝子の家に一周忌のために集った。勝子には六歳の弘があった。その年の暮に雑誌社に務めていた楢崎は勝子と結婚した。楢崎、勝子、弘の三人の団欒は楢崎の戦友の吉野が和歌山の田舎から妻子四人をつれて転がりこんできたことから破れてしまった。そのうちに楢崎は脚の怪我がもとで失職してしまい、勝子は大平の世話で丸の内の劇場の売店に務めることになった。大学を出て新聞社に務めるようになった大平は勝子をひそかに恋するようになった。二十五年の秋に戦友達はまた会合した。武内は特需ブームで巨万の富をもつようになっていた。武内は家に戦災孤児の朝子を引きとっていた。武内の紹介で楢崎は倉庫会社に職を見つけることが出来た。吉野も武内の世話で仕事を得、楢崎の家を出て行った。ある夜大平は勝子に愛情を告白した...
直木賞作家・立野信之の原作を名優・佐分利信が監督を務め映像化したサスペンスドラマ。二・ニ六事件に至る陸軍内部の葛藤相克を、新東宝オールスターキャストで描く。